【流鏑馬】弓馬軍礼故実 武田流 師範 小池 義明さんインタビュー

2016.04.15



今回は4/17(日)に行われる鎌倉まつり流鏑馬を行っていただいている大日本弓馬会にご協力いただき、射手をつとめられる小池 義明さんにインタビューをしました。鎌倉まつりに対する思い、そして今後の流鏑馬の展望を熱く語っていただきました。

-流鏑馬は一般の方にはあまりなじみがないようなので、流鏑馬とはどのようなものなのかを簡単に説明していただけますでしょうか?
小 池もともと流鏑馬は占いです。『天下泰平でありますように』などの祈りを占うために、的3つを射っていました。なので、スポーツや武術の技量を競うというよりも、神事という部分のウェイトが結構重いんですよ。3つの的の大きさは、最初の的が約55cm、その次の的が約40cm、そして最後の小さい的は黒いところが3寸ですが、実際は15cmくらいありますね。

-そうなのですね!ではそもそも流鏑馬を始めたきっかけは何ですか?
小 池最初は洋馬をしていたんですよ。その時の先生から武田流の先代の先生を紹介していただき、「流鏑馬をやってみたら?」と言っていただいたんです。最初はピンとこなかったので見に行ってみたら、武田流の流鏑馬はすごいスピードで。馬が全速力で走っていくのを見て、「なんて美しくてカッコイイんだ」と思ったことが流鏑馬を始めたきっかけですね。
ただ入ってみたら、和馬術と洋馬術の乗り方が違ったのですごく苦労をしました(笑)。

-洋馬術と和馬術の違いはどんなところですか?
小 池分かりやすく言うと、馬が斜めに歩いたり、スキップをしたり、馬に色んなことをさせるのが西洋馬術。そして、乗ってる人間が後ろを向いて射ったり、体をひねって射ったりと、馬の上で人間がいろんなことができるのが和馬術です。

-流鏑馬の見どころはなんですか?
小 池馬のスピード感と射手の技量ですね。1つの的を射った後、次の的を射るために矢を抜いて、弓の弦に仕掛け、次の的に間に合わせる。馬が速くなればなるほどそれが難しくなっていきます。それを馬の上でバランスを崩さずに行い、さらにその一連の動きの中で的を3つ射れるっていうのが1番の見どころじゃないですかね。
あとは、射手の姿勢の美しさですかね。洋馬ですと、必ず乗っている人の体が上下してしまうんです。ところが流鏑馬の場合は、馬は上下に動いて走っているんですけど、射手は頭にレールが引かれているかのように上下せずに進んでいく。その乗り方が日本の和馬術の極意だと思うんですよ。体が上下に動いてしまうと的を狙えませんし、ブレてしまう。
真っ直ぐ進んでいるからこそ的を狙うことができるんです。

昨年度「第57回鎌倉まつり」流鏑馬の様子

-体がブレないようにするために、射手の方は特別な稽古などをされているんですか?
小 池はい。あとは道具も重要ですね。道具が和鞍(わぐら)と鎧(あぶみ)っていうんですけど、それが素晴らしいんです!それを使いこなせているから上手く乗れているのであって、その道具じゃなかったとしたらその乗り方はできないんですよ。
馬に乗るのが上手い人は早い馬には乗れるんですが、馬が急に止まった時にみんな落っこちちゃうんですよ。ところが、この和鎧と和鞍はその状態でも全然落ちずにスッと止まれるんです。戦場で馬が走っていて急に止まることだってありますよね?そういう時に落っこちちゃったら殺されちゃうじゃないですか。だから、そんな時でも平気なように作られてるんです。

-なるほど!色々大変なこともありますが、「流鏑馬をやっていて良かった」と思ったことはありますか?
小 池一昨年、オバマ大統領が来日された際、2日目に明治神宮に来られたんですが、天皇陛下のお客様への最高のおもてなしとして流鏑馬を選んでいただき、私どもが流鏑馬をご披露させていただいたというのがすごく日本のために貢献している、日本人として貢献できてよかったなと思いましたね。
大統領が明治神宮に到着されてから流鏑馬を見るまでの時間が20分と限定されていたので我々は18分で終わらせたんです。予定では終わったらすぐに帰られることになっていたのですが、終わったら時間なんて関係なかったんです。安全面の関係上、大統領は埒を越えないということになっていたのですが、大統領は埒を2本越えて、満面の笑みで射手のところまで来てくださり、射手全員と握手をしてくださりました。
最後には事務局メンバーとも握手をしてくれて。それほど喜んでいただけたということだと思います。大変名誉な経験をさせていただきました。

-大統領の前でも披露した流鏑馬を、今回鎌倉まつりで行っていただくとわけですが、鶴岡八幡宮で流鏑馬を行うことについて何か思いなどはありますか?
小 池もともとは源頼朝が1185年に鎌倉で初めて流鏑馬を行ったわけです。その時の2番手の射手として武田流2代目の武田信光(のぶみつ)が出ています。ですから、僕たちとしてはやはり本家本元、原点だという気持ちが強いですね。私どもは年間で10回程度行事を執り行っていますけれども、そういう意味では1番気合いが入るところが鎌倉だというふうに思っております。

―流鏑馬を見る際に「ここにも注目してほしい」という部分はありますか?
小 池やっぱり礼儀作法ですかね。実際に騎射する場面だけではなくて、天長地久(てんちょうちきゅう)の式であるとか、終わってからの凱陣の式(がいじんのしき)、最後には直会(なおらい)という一連の流れ全て合わせて流鏑馬ですので、それも全部見ていただきたいですね。

昨年度「第57回鎌倉まつり」流鏑馬 出陣式の様子

―最初から最後まで見逃せないですね!また、今回“諸役”を一般の方から募集をしたわけですけれども、その役割について教えてください。
小 池この神事を行うに際して、様々な行事に関わる人たちのことをひとまとめで“諸役”と言っております。基本的には14人いまして、それぞれ役割が違っているんです。
安全に流鏑馬ができるように、例えば扇を振って3つの的それぞれの準備は大丈夫なのか、馬が出てもいいのかを確認したり、その辺の役割を諸役が果たしているんです。1人でも欠けていたら行事が円滑に進まないという重要な役割なんです。
流鏑馬という神事を射手、奉行、諸役1人1人が支えているんだと思っていただけたらいいと思います。

―そうなんですね!では次に、「ふれあいタイム」ついても教えてください。
小 池「ふれあいタイム」で射手が流鏑馬の説明をしますし、実際にそのあと走る馬が馬装をしてやって来ます。通常であれば馬に近づくことができないので、それを間近に見れるということはとても素晴らしい機会だと思いますし、射手の説明を聞いた後に流鏑馬本番が観れるというのはすごくいいんじゃないかなと思います。
また、馬のことについて言えば、草食動物なので性格としては非常におとなしいんですが、自分の身に危険が迫ったと思うと、走って逃げるしかないんですね。ですから、あまり刺激をしないであげてください。馬の視野は350度あり、尻尾の辺りだけ見えないっていう視野の中で急な動きっていうのがびっくりしちゃうみたいなんですね。なので馬の近くではなるべくゆっくりな動きで馬を安心させてあげてください。

―今回も「東日本大震災復興支援」という形で流鏑馬を奉納していただくのですが、そのことに関して思うところはありますか?
小 池5年前、本来でしたらそういうお祭りごとは全て中止という形だったんですけれども、流鏑馬は先ほども話した通り「祈り」の意味がありますので、流鏑馬だけ特別にということで4月に奉納させていただきました。もともとが「天下泰平」を祈願しての神事になっていますから、それとぴったりというんですかね。
また、「相馬野馬追」といって、福島の方で馬を500騎ほど集めて色んな行事を行うんですけれども、それも震災の関係で全部中止になってしまって。そういう意味じゃ、鎌倉ではそういう方に対する一つの神事として流鏑馬を行っている非常に意義のあることだと思います。
※現在、「相馬野馬追」は復活しています。

―今後はどのように流鏑馬を広めていきたいと考えていますか。
小 池小学生や中学生に対して、馬を通して流鏑馬に触れるというチャンスを作らなきゃいけないと思うんですよね。今現在、流鏑馬において若い人が非常に少なくなってきてしまっているので、そういうふれあいの場所を、鎌倉まつりのような神事を通してでもいいですし、あるいは日常的にそういうことが出来るようなことを考えて、この日本の伝統文化である流鏑馬を知ってもらい、やってもらうというのが一番ですね。
また、武士道というものは武家の古都鎌倉が作ったもの、鎌倉から育ったものだと思うので、「武士道の精神っていうのは鎌倉にあり」ということを子供達に知ってもらうためにも、流鏑馬に接する場所をこれから考えていかなきゃいけないなと思います。
流鏑馬をやることに誇りを持ち、「僕は流鏑馬の射手なんだよ」っていう誇りを持ってもらえるようにしていきたいですね。

―鎌倉まつり以外で流鏑馬を観覧できる場所はありますか?
小 池河口湖、小田原、逗子、三浦などで観覧していただけます。
特に鎌倉の近くだと、逗子と三浦!これは是非観に来ていただきたいですね。
ちなみに、お客さんが1番多いのは小田原で、先日は2万1000人いらっしゃいました。
また、大河ドラマ「真田丸」に関連して、鎌倉市の姉妹都市である上田市の上田城で7月24日(日)に流鏑馬を披露させていただく予定となっております。
※詳しい行事予定につきましては(公社)大日本弓馬会ホームページよりご確認ください。


-期待しています!
最後に、今回の流鏑馬を楽しみにしてくださっている観客の皆様へのメッセージをお願いします。

小 池やっぱり生の馬の足音ですね。地響きを、蹄の音を体験していただきたいなと思います。
あとは馬上の姿勢の良さといいますか、そういう姿勢の良さの中から的3つを射っていく。外れてしまうこともありますが、的中した時の見事さ。そこを是非見ていただきたいと思います。
今回の「鎌倉まつり」を通して流鏑馬はスポーツではなく神事であるということ、また天下泰平を願って奉納をしているということを理解できるような機会になればいいなと思います。

-ありがとうございました!

 

小池 義明昭和33年11月12日生まれ
金子四郎家教に師事。
ブッシュ米国大統領、オバマ米国大統領の訪日記念流鏑馬において貫頭として出場。
また、バハレーン、オマーンなど国外に招待され記念流鏑馬に貫頭として出場。
その他メディアへの出演歴多数。
平成28年2月、寒川神社における師範就任奉告祭を経て、弓馬軍礼故実武田流の師範に就任、現在に至る。







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