リレーエッセイ<鎌倉人>「文学の香りのする街」第5回:黒瀬聖子さん

鎌倉に暮らし、鎌倉を愛する「鎌倉人」の生の声をリレー形式でお届けするコーナーです。毎回の執筆者が次の執筆者を紹介していただく型式なので、どんな人が登場するか編集部にも予想がつきません。どうぞお楽しみに。

子どものころ、鎌倉は遊びに来る街でした。祖父母の家に泊まり、海、墓参、初詣。絵日記のような記憶ばかりです。鎌倉生まれながら、5歳のとき父の転勤で他県に越して以来、再び移り住んだのは社会人になってからでした。

桜道
桜道

その後も数回出入りを繰り返し、2004年に転入してから今年で10年目。トータルすると25年ほどになります。ここで暮らし、活動することがようやく当たり前になった気がしています。

鎌倉は季節を感じる街です。これは大人になってからいくつかの他の街で暮らしてみて、初めて意識したことです。どの街にも四季は訪れ、人々の生活は様々な行事に彩られていますが、鎌倉にいると、街自体が季節ごとに衣装を替え、空気さえも変わっていくような気がします。自然環境に恵まれていることに加え、社寺や教会も街の一部として溶け込んでいることも一因でしょう。

だからこそ、鎌倉には古くから多くの芸術家や文学者が移り住んだり、創作の場として選んだのかもしれません。日本文学史に名を連ねる文豪の多くが鎌倉にご縁があることを知ったのは、大人になってからでした。教科書の中の人物が突然生身の人間となって、目の前を歩いているような気がしたものでした。

滑川
滑川

近年鎌倉は、東京近郊の観光地として人気が高く、連日多くの人でにぎわいます。楽しんでくださるのは嬉しいことですが、新しいお店も増え、だんだんと特色を失ってきているような気もしています。新しいものが悪いというのではなく、イメージだけの「鎌倉らしさ」を追い求めるより、これまで長年の間に培ってきた文化を、きちんと残し、伝えていきたいと思うのです。

私は今年15年目を迎える図書館友の会で活動しています。鎌倉の図書館には100年の歴史があり、たくさんの貴重な資料やベテラン司書がいます。見た目は地味ですが、探検すると奥深いところです。次の世代に何をつなげていけばいいのか、ここを拠点に考えていこうと思っています。

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