文学の旅へのご招待〜鎌倉文学館コラム〜ミステリアスな文学館へ、ようこそ 館長:富岡幸一郎

春の鎌倉文学館では、4月21日(日)まで「ミステリー作家・翻訳家」展を開催しています。昇曙夢[のぼり しょむ](ロシア文学者)、厨川白村[くりやがわ はくそん](イギリス文学者・翻訳家・文芸評論家)、山内義雄(フランス文学者)、神西清[じんざい きよし](ロシア文学者・小説家)、秘田余四郎(映画字幕翻訳家・小説家)、小尾芙佐[おび ふさ](翻訳家)、そして没後25年の特集として澁澤龍彦(フランス文学者、小説家)の展示をしています。

ロシア文学の関連でいえば、1月から3月までフジテレビでドラマ『カラマーゾフの兄弟』が放映されています。文豪ドフトエフスキーの代表作です。そのドラマの舞台として鎌倉文学館の外観が使われました。カラマーゾフ家(ドラマでは「黒澤家」となっています)の屋敷です。タイトルバックに浮かびあがる闇の中の洋館の全貌は美しく戦慄的です。鎌倉の地に建てられた旧前田侯爵家の別邸が、時空をこえて19世紀ロシアのカラマーゾフ家の屋敷に変貌するところは、ロシア文学を明治以降に繰り返し翻訳・受容してきた近代日本文学の姿を彷彿(ほうふつ)とさせます。

『カラマーゾフの兄弟』は、人間の存在をめぐる壮大な文学作品ですが、物語は父親殺しの犯人は誰か、というミステリー仕立てになっています。ミステリーはその意味ではジャンルをこえて文学の根底に流れている要素だといえるのではないでしょうか。

折りしも文学館で展示している鎌倉ゆかりの作家・三上延さんの『ビブリア古書堂の事件手帖』は、北鎌倉の古書店を舞台にした人気ミステリー作品です。こちらも、1月から3月までフジテレビのドラマで放映されています。待望の最新刊が2月に刊行されたばかりで、第1巻を執筆したノートパソコンやビブリア古書堂の見取り図などを展示しています。ファンの方々にぜひ文学館に来ていただきたいと思います。

春の特別展では「太宰治」展を開催します。昨年の特別展「源実朝」では、太宰が昭和18年(1943)に刊行した小説『右大臣実朝』を紹介しましたが、今年、刊行からちょうど70年の歳月が経ちます。太宰治も21世紀の現代にまで読み継がれる人気作家ですが、太宰と鎌倉の関係は少々ミステリアスです。

当館名物のバラの季節はもう少し先ですが、同じバラ科の桜が3月下旬から鎌倉をにぎわせます。文学館の近くでは長谷寺や光則寺、甘縄神明社などがおすすめです。桜見物のついでに、ぜひお運びください。

甘縄神明社の桜
甘縄神明社の桜

ページの先頭へ