リレーエッセイ<鎌倉人>「小さなやすらぎ」第3回:斎藤政丈さん

鎌倉に暮らし、鎌倉を愛する「鎌倉人」の生の声をリレー形式でお届けするコーナーです。毎回の執筆者が次の執筆者を紹介していただく型式なので、どんな人が登場するか編集部にも予想がつきません。どうぞお楽しみに。

鎌倉の路地
鎌倉の路地

仕事にストレスを感じたとき、自転車にカメラと三脚を積んで、鎌倉散策へ出かけます。大仏邸まえの路地、八幡宮よこ付属小学校の路地、雪ノ下の路地、そして大塔の宮を経て永福寺跡地の原っぱへ。すべて路地づたいで到着します。そこでは、捕虫網を持って駆けずり廻った少年時代の思い出の、野草・昆虫・鳥、ときには爬虫類を見つけ、喜びます。今は、捕らずに写真を撮りながら楽しみます。永福寺の復元工事や切通しをビデオに収めたりもします。こうして、鎌倉中の路地を走り、野原から山を歩きまわり、野生の、スハマ草の群落・ミヤコアザミ・リンドウに巡り会えました。良い気分になり、下馬四つ角の事務所へ戻り、もう50年以上続けている建築設計の仕事に掛ります。

住宅の設計は設計者の個性よりも<あなたらしさ>、公共建築は大規模となることも多く民間建築への波及効果を重視し<環境との調和>、商業建築は<その時代の感性>、を表現すべく努力してきました。これからの建築・まちづくりで大切なことは、特に鎌倉の場合、市民・訪れる人たち、皆が、自然と文化が両立するこの地にちょっとした心身の<やすらぎ>を求めて集まってくることを思うと、おだやかさ、やさしさ、ストレスをかんじさせない空間・ディテールがポイントになりそうです。素朴な成金趣味でない、質実剛健な建物、路地空間、ちょっと入り口を引っ込めて造ったポケットパークなど、<一時代まえの鎌倉の佇まい>にヒントがありそうです。肩肘はらず、さり気なく、でもなぜか居心地の良い空間、マジシャンのようなテクニックが必要になるようです。

鎌倉の路地自転車でどこへでもいけるこの小さなまち、どうだ、どうだは疲れます。一歩退いてあたたかい、ほどほどに変化していけばいい。そんな言葉も聞こえてきそうです。静かな空間のなかで眼にする可憐な花々に、<ちいさなやすらぎ>を感じ、生きているよろこびをかみしめる、小さくて、素敵な、まちです。

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