【第59回鎌倉薪能】演目解説

2017.08.01


融 (金春流 シテ 金春安明)


【能  融(とおる)】




_秋の夕暮れ、旅の僧(ワキ)が都の六条河原院を訪れ、汐を汲む老人(前シテ)と出会います。僧は、海のない都で汐汲みのための田子桶を担ぐ老人を不思議に思います。僧が尋ねると、老人は昔、源(みなもとの)融(とおる)の大臣(おとど)が陸奥(みちのく)千賀(ちか)の塩竃(しおがま)(現在の宮城県)を模した風景を河原院に再現して作ったこと、それゆえ汐汲みが河原院にいても不審ではないと言います。
_東の空に月が出ます。老人は、融が塩竃を模した庭に難波(なにわ)(大阪)の津の浜から海水を運んで塩を焼かせ、その風情を楽しんでいたことを語ります。しかし融亡きあと河原院を受け継ぐ人はおらず荒れ果てていると昔を偲び、涙にくれるのでした。
_老人は、僧に河原院から見える名所を教えます。東の音羽山(おとわやま)、清閑寺(せいかんじ)、今(いま)熊野(ぐまの)、南の稲荷山(いなりやま)、藤の森、深(ふか)草山(くさやま)……二人は一緒に景色を眺め渡します。さらに西の大原の小塩(おしお)の山、松(まつ)の尾(お)、嵐山……月光の下、次第に老人は興に乗ってきます。けれども月が高く昇り、満ち汐の時がすでに過ぎていることに気付くと、田子桶を担いで海水を汲み、そのまま汐のしぶきに隠れて、姿が見えなくなってしまいました(中入(なかい)リ)。
_都に住む男(アイ)が、河原の院にたたずむ僧を見つけます。男は融の大臣の話をし、僧に弔いを勧めました。そこで僧は河原の院で夜を過ごすことにします。
_夜、貴公子の姿の融の大臣の霊(後シテ)が現れ、その昔の月の明るい夜に、籬(まがき)が島(しま)に舟を浮かべて遊んだことを謡いあげて、昔と同じように舞を舞います。やがて月が傾き、かすかに消えていく月の光に誘われるように、融の霊は月の都へ帰ってゆきました。


 


樋の酒 (和泉流 シテ 野村万作)


【狂言 樋の酒(ひのさけ) 】




_外出をしようとする主人(アド)が、太郎冠者(シテ)に米蔵の番をするように、次郎冠者(アド)には酒蔵の番をするように命じます。主人が出かけると、次郎冠者は酒蔵の酒を飲み始めてしまいます。太郎冠者も酒を飲みたがりますが、米蔵を出ることは禁じられているので……。
_太郎冠者と次郎冠者の突拍子もないアイデアが見どころ。小道具と能舞台の使い方にもご注目ください。


 


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